真妻のわさび作りについて 真妻わさび発祥の地

真妻のわさび

真妻わさびの発祥の地

国産の本わさびの最高峰として名高い品種「真妻わさび」。現在は静岡県をはじめ全国で栽培されています。しかしそのルーツは和歌山県印南町川又(旧真妻地区)にあります。日本原産のわさび、その歴史は飛鳥時代ともいわれていますが、栽培されるようになったのは江戸時代初期。静岡県阿部川上流の有東木(うとうぎ)地区ではじまったとされ、徳川家への献上品とされたと伝えられています。

真妻のわさび作りの歴史

和歌山県日高郡印南町を流れる切目川の上流、川又地区(旧真妻)でわさびが栽培されるようになったのは、明治21年(1888年)とされています。十津川から移入したという説と、それ以前に在来種として育っていたという説があります。昭和30年頃、旧真妻村議が栽培を奨励したのが真妻わさびの起源とされています。

平井農園 わさび農家

真妻わさび発祥の地

栽培が全盛期だった昭和30~40年代に約15軒ほどあり、栽培面積も全体で1町歩く(約1ha)ほどありました。当時は全国有数のわさび生産量を誇っていました。現在、わさび農家は平井農園を主として数件にまで減少しています。平井農園は約130年続くわさび農家、現在は4代目農園を引き継いでいます。また、まんが「美味しんぼ」103巻 日本全国味巡り 和歌山編でも平井さんのわさびが紹介されました。

ダルマわさび

真妻種はわさびの中の最高峰とされ、強い辛味の中にまろやかや甘みがあり、香りも豊か。しかし苗の育成や栽培条件が限られるため、実生品種に比べて栽培が難しい。(※上記写真はダルマ種)

【※ご注意事項】
旧真妻地区のわさびがすべて真妻わさびというわけではありません。「真妻わさび」は旧真妻が発祥の品種名です。現在、川又地区(旧真妻)の平井農園では主に「ダルマ種」を栽培しています。





真妻わさびが全国に広がった理由

真妻わさびが全国に広がったきっかけは、昭和33年、静岡県が狩野川台風により被害を受け、当時有力種だった「ダルマ種」がわさび田もろとも大打撃を受けたことに起因しています。その後、昭和36年、静岡県のわさび生産者29名が関西方面への研究旅行をおこない、その最終地として印南町川又(旧真妻)に訪れ、わさび田の視察をおこないました。

真妻のわさび作り

当時、真妻のわさびは優良でその後も静岡から苗の購入に来る生産者もいた。当時の静岡では「真妻まいり」という言葉が生まれた程、苗の確保に必死だったといわれています。静岡では真妻種の優良品選抜などをおこない、多くの生産者が真妻種を導入し、それが全国へと広がっていきました。

現在では、静岡でも実生品種に比べ栽培期間が長いことや適地の減少などを理由に、真妻種の栽培は全体の3割ほどにまで減少しています。

平井農園の栽培品種について(ダルマ種・真妻種)

現在、印南町川又の平井農園で栽培されている品種は、主にダルマ種(実生)です。ダルマ種は1年~1年半ほどで大きく成長し、収穫できる優良品種。真妻種は長年の栽培により形質が退化し良品を得にくくなったことや、栽培期間が1年半から2年以上と長く栽培が難しい点、実生品種に比べて収益性が厳しい点、水害などによる影響で、真妻種の出荷は途絶えてしまいました。しかし平井農園ではダルマ種に主軸をおきながらも、真妻種の復活にむけて試験栽培に取り組んでいます。

ダルマ種 青茎系

ダルマ種(青茎系)

ダルマ種は上品な辛味とまろやかさが特徴。茎や根茎が淡い緑色で、栽培期間は1年~1年半で成長が早く栽培しやすい品種です。種子から苗を育てる実生品種。各農家が選抜育苗したものを含めると多くの品種があります。

真妻種 赤茎系

真妻種(赤茎系)

真妻種は強い辛味の中に淡い甘みがあり、香りや粘りも優れています。茎や根茎に赤紫色が混じり、栽培期間は1年半~2年以上。親から分けつした子苗を育てる栄養繁殖や、品質保持のためのバイオ技術によるメリクロン苗を使います。

わさびの栽培環境について

わさび畑

印南町の最奥、川又の自然の沢の渓流を利用してわさびは栽培されています。わさびは年間水温が15度以下の栄養分が豊富なきれいな水のある限られた環境でしか大きく育つことができません。

わさび畑

最適気温…12~15度、最高気温28度以上で障害が発生。5度以下で生育が止まります。

最適水温…12~13度、18度以上で生育が不安定になります。

沢わさび(水わさび)

沢わさび(水わさび)

沢わさびとは自然の沢の清流を利用しわさび田を作って栽培する方法です。一般的に根茎の部分をおろして食べるわさびはこの沢わさびのことです。渓流式、地沢式、畳石式、平地式など様々な方式があります。平井農園では渓流式、地沢式を取り入れています。夏場の直射日光を避けるため寒冷紗を使用します。

畑わさび(陸わさび)

畑わさび(陸わさび)

その名のとおり畑で栽培するわさびです。沢さわびに比べ根が太らないことから、主に葉や茎の加工品に適したわさびです。わさびおろしやわさび漬けなどに利用されています。葉わさび、茎わさびは主に2~4月頃が収穫時期になります。酢飯をわさびの葉で包んだ「わさび寿司」も和歌山の郷土料理として有名です。

わさびの旬の時期

わさびの旬の時期

わさびの根は年間を通じて収穫可能ですが。主に11~2月の冬の時期が最も辛味があり旬の時期となっています。

わさびの花の時期

花わさびは2~3月頃が収穫時期となります。わさびは捨てるところが無いといわれ、もちろん花も食べることができます。

平成23年9月の紀伊半島豪雨による被害

平成23年9月の台風12号による紀伊半島豪雨により、平井農園のわさび田全体の約7割が土砂に埋まったり、河川の氾濫により流失し、甚大な被害を被りました。この年、ようやく真妻種の復活に向けて試験栽培をスタートさせたばかりのわさび田も被害をうけました。

わさび畑の台風被害(紀伊半島豪雨)

沢の流れを利用して栽培するため、この紀伊半島豪雨によりほとんどのわさびが流され壊滅的な被害をうけました。わさび田は山あいの急斜面にあるため重機などが入らず、大変な時間と手間をかけ手作業によって土砂を取り除き、修復することになりました。

わさび畑の台風被害(紀伊半島豪雨)

沢が濁流となりわさび田に土砂が大量に流れ込み壊滅的な被害を受けた様子です。

わさび畑の台風被害(紀伊半島豪雨)

河川の増水によりわさび田の一部が川の中に崩落してしまっています。

今後の取り組みについて

和歌山県印南町川又地区でのわさび作りには、歴史的背景もあり、新しいとことにチャレンジしつつも先人達が築き上げた特産品のわさびを後世に引きついていくために、わさび作りを守り続けていくことが大切であると考えています。沢わさびについては実生品種を中心とした生産体制の安定化を図る。そしてわさび産地拡大のために比較的栽培しやすい畑わさびの普及もすすめていきます。その中でわさびを使った加工品を製造して販売し、将来の地域活性化を目指していきます。

わさび作りの未来へのチャレンジ

ただし、生産を守り続けていくないかで本質を見失い、効率のみを重視した形での栽培は、そのわさびがどれだけ立派なものができたとしても、本物を追求するお客様が求めるわさびとしては、そこに本当の価値が見出せないと思っています。例え非効率でありながらも自然を重んじ、共存しながら試行錯誤を重ねて作り続けられるわさびにこそ本物の価値が生まれ、本物を追求するお客様が求めるわさびに近づくと信じています。

わさび作りの未来へのチャレンジ

また、古くからわさびが作られていた真妻地域の中の最奥の川又地区であり、ここでわさびを作り続けることに最も意味があり、それが平井農園が目指すわさび栽培です。また、もうひとつは仲間の存在であり、同じ志を持った、本気でわさびを作りたいと思う生産者が一人でも多くできて、互いに切磋琢磨しながら、川又、真妻、印南町、和歌山の将来を最高のわさびでアピールしていきたいと考えています。

よくある質問(FAQ)

本わさびと西洋わさびの違いを教えてください
本わさびは日本原産のアブラナ科の植物です。一方、西洋わさびは同じくアブラナ科のホースラディッシュ(別名わさびダイコン)すりおろすと大根のように白く、本わさびに比べて大きいのが特徴です。西洋料理ではローストビーフの付け合わせなどに使われます。チューブわさび特有の鼻にツーンとした辛味が西洋わさびの特徴で、チューブわさびや粉わさびとして広く流通しています。
本わさびの味は?
本わさびの味は、もちろん品種によっても異なりますが、ピリっと辛い中にまろやかな甘さがあり、わさびの特有の風味が口に広がります。辛さは長くは持続せず後味もスッキリ。
本わさびの食べ方を教えてください
わさびは醤油などに溶かさず、お刺身やステーキに直接付けて食べることをおすすめいたします。醤油などに溶かしてしまうと風味と味が薄れてしまいます。
わさびはなぜ辛い?
わさびの主な辛み成分は、「アリルからし油(アリルイソチオシアネート)」。わさびの細胞内にミロシナーゼという酵素とシニグリン配糖体という成分があり、すりおろした際に細胞が壊れ双方が反応したときに辛味成分であるアリルイソチオシアネートができます。きめ細かくおろすことでより辛味成分を引き出すことができます。そのため、細かくすりおろせる鮫皮おろしはわさびには最適です。
わさびは部位によって味が違うのですか?
わさびの根茎には、外側の方にミロシナーゼがより多く含まれています。そのため、できる限り皮はむかずにおろす方がよいでしょう。
おろす際の方向は上から?下から?
茎の付いている上の方からおろすのが基本です。根茎はきれい土を洗い流した後、茎をすべて取り除き、皮はむかずにおろします。茎に近い部分の方が細胞が新しく、鮮度、風味が良いためです。鮫皮おろしなどを使う場合は、わさびの辛味を出すために、円を書くようにゆっくりとやさしくおろしましょう。
おろしたわさびの辛さがなくなった
わさびの香りと辛味は揮発性ですので、使う直前にすりおろしてください(10分以内で食べるのが理想です)。空気に触れる時間が長くなると辛味がなくなってきます。食べる直前におろすのが基本ですが、予めおろす場合は、空気に触れないようにラップなどでしっかりと包んでおいておきます。
保存方法を教えてください
数日~2週間で使う場合は、水でぬらした新聞紙やキッチンペーパーでくるんだ後、全体をラップし冷蔵庫で保存します。使いかけのわさびを保存する場合は、おろした部分を水できれいに洗ったあと、水分を拭き取り、切り口をしっかりラップで包み、冷蔵庫で保存します。
保存していたら黒くなってしまいました
長く保存しますと、表面が少し黒くなる場合がありますが、ご利用は可能です。気になる箇所は包丁で切り落としてください。おろした際に中まで黒い場合はご利用をお控えください。
冷凍しても大丈夫?
冷凍保存は可能です。冷凍する場合は、きれいに洗い水気を拭き取ったわさびをそのままラップに包み冷凍庫で保存します。使用時には解凍せずに冷凍状態のまますりおろし、残ったわさびはすぐにラップに包み直し冷凍庫に戻します。この方法ですと半年ほど保存が可能です。
なぜ沢わさびの方が畑わさびより根が大きく成長するのか?
わさびは根からアリルイソチオシアネートという殺菌物質を放出しています。これがわさび特有の辛味成分でもあるのですが、この物質は周辺の土壌を殺菌するかわりにわさび自身もこの物質によって成長を阻害されてしまうのです。そのため、常にきれいな水が流れている中で育てる沢わさびは、流水によってアリルイソチオシアネートが洗い流されるので、大きく成長することができるのです。

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